最初、他の薬を使用して悪化して、アビガンを投与して治る...というケースが多いです。

 

 

今回紹介するのも、そういったケースです。

 

 

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200415_6.pdf

 

 

発症 8 日目にファビピラビルを投与し、翌日から急速に改善した COVID-19 肺炎の 1 例

 

 

日本赤十字社伊勢赤十字病院 感染症内科

 

坂部 茂俊 田中 宏幸 中西 雄紀 豊嶋 弘一

 

 

症 例

 

 

【症例】30 歳代男性

 

 

【主訴】発熱

 

 

【既往歴】なし

 

 

【嗜好歴】過去に喫煙あり。機会飲酒あり。

 

 

【現病歴】

 

 

2020 年 3 月某日から発熱があり、その後右耳奥の違和感と右頸部の痛みを自覚した。

 

 

新型コロナウイルス感染症患者との明らかな接触歴はなかったが、発熱 4日目に受診した医療機関で RT-PCR 法による遺伝子検査を受けたところ SARS-CoV-2 陽性であったため新型コロナウイルス感染症と診断され、翌日(第 5 病日)当院に入院となった。

 

 

 

【入院時現症】

 

意識清明。倦怠感、右頸部痛、味覚障害、嗅覚障害あり。呼吸器症状なし、呼吸音清明、心雑音なし。消化器症状なし。中肉中背、BMI 約 24。体温 38.2℃、血圧 132/80mmHg、脈拍数 90 回/分、呼吸回数 15 回/分、SpO2 97%(室内気)。

 

 

【入院時血液所見(Table1)】

 

 

白血球数は正常でリンパ球数は 1,273/μL だった。CRP 値、LDH 値の軽度上昇があった。

 

 

【入院後経過】

 

 

基礎疾患のない若年者で現在喫煙習慣なく全身状態が良好であったため、軽症と判断し血液検査のみ実施した。

 

 

 

ファビピラビルの適応外使用に関する院内手続きを進め患者に治験の説明をしたが、積極的に使用を勧める状況ではないと判断し、前医から処方されたアセトアミノフェン 400mg/回・頓用を継続し他の薬剤は追加しなかった。

 

 

 

入院翌日以降 38℃台の高体温が続き徐々に倦怠感が強くなった。

 

 

 

第 6 病日から乾性咳嗽が出現し呼吸回数が 17 回/分まで増加し、SpO2 95%(室内気)に低下した。第 8 病日には労作時呼吸困難感の訴えがあった。

 

 

 

このため第 7 病日以降検査を追加した。

 

 

 

第 7 病日の胸部単純X線写真では右下肺野に淡い網状陰影が出現し(Fig.1)、第 8 病日の胸部 CT では両側全肺野に多発性に斑状陰影が確認された(Fig.2)。

 

 

 

また第 8 病日の血液検査では入院時と比べ血小板数の低下、CRP 値、LDH 値、AST 値、ALT 値の上昇が認められた(Table 2)。

 

 

 

症状、検査データともに増悪し、さらに急激な悪化のリスクがあるものと考えられた。この内容を患者に説明したところファビピラビルの使用を希望した。

 

 

 

あらためてインフォームドコンセントをおこない、効果に期待をもつものの現状でエビデンスが不足した治療であることを強調して投与を開始した。

 

 

 

投与方法、投与量は 1 日 2 回内服で初期の 2 回は 0.9g/回、後は0.4g/回とし第 8 病日夜から開始した。

 

 

 

投与初日は夜間に SpO2 90%台前半となり酸素投与を考慮したが第 9 病日は体温 36℃台で推移し午後には室内気でSpO2 97%まで回復した。

 

 

 

3 回の下痢があったが第 10病日には軽快した。

 

 

 

第 10 病日に呼吸困難感や倦怠感が軽快し味覚が回復した。

 

 

 

血液検査では CRP,LDH 値が低下し AST,ALT 値は正常値になり、尿酸値が上昇した(Table 2)。

 

 

第 11 病日には平熱が続き嗅覚が回復したが、鼻咽頭ぬぐい液の遺伝子検査結果は陽性だった。

 

 

 

第 12 病日には夜までに乾性咳嗽が消失した。遺伝子検査は実施しなかった。

 

 

 

第 13 病日に実施した血液検査血では血小板数が著増、LDH 値が正常値になり CRP 値はさらに低下した。回復を示す内容であると判断した(Table 2)。

 

 

 

第 13 病日、14 病日に連続して遺伝子検査結果が陰性で退院基準を満たしたためファビピラビルを 15 病日夜で投与終了とした。

 

 

第15 病日の胸部 CT では肺野の斑状陰影は一部に残存するものの改善を認めた(Fig.3)。16 病日に全ての症状が消失し退院した。