“感染を避ける”という考えに囚われいている人は、体が元々菌やウイルスに感染しているという全体像が見えていません。

 

 

 

菌やウイルスを含めて体が成り立っています。

 

 

 

「必要なシステム」が無くなってしまったら大変なので、むしろ排除できないように、自然がなっている...と考えるべきです。

 

 

 

 

実際に、ウイルスは小さすぎて、どこからでも入ってきます。

 

 

 

 

 

 

人間とウイルスの関係が分かる話の一部を紹介します。

 

 

神戸大学大学院農学研究科教授の中屋敷 均氏です。経歴はこちら。

 

 

 

1987年京都大学農学部農林生物学科卒業。博士(農学)。現在、神戸大学大学院農学研究科教授(細胞機能構造学)。

 

 

専門分野は、植物や糸状菌を材料にした染色体外因子(ウイルスやトランスポゾン)の研究。著書に『生命のからくり』(講談社現代新書)、『ウイルスは生きている』(同/2016年講談社科学出版賞受賞)がある。

 

 

 

私たちのDNAの大部分は、「ウイルス」で出来ていた!最新研究が塗り替えた驚きの「生命」像

 

 

新型インフルエンザやエイズなど、人類を脅かす感染症を伝播する存在として、忌み嫌われるウイルスだが、自然界には宿主に無害なウイルスも多い。

 

 

 

最新のゲノム解析から、生物ゲノムには、驚くほどたくさんのウイルス(およびその関連因子)が存在しており、それらが生物進化に重大な貢献をしてきたことが明らかになりつつある。

 

 

ヒトゲノムも、その約半分はウイルスとウイルスもどきの遺伝子配列が占めているという。

 

 

つまりヒトを含む生物のゲノムは、ウイルスのような寄生者と合体して出来上がっているとも言えるのだ。この驚愕の事実を、植物や菌類のウイルスがご専門の中屋敷均さん(神戸大学大学院農学研究科教授)にインタビューした。

 

 

Q.ウイルスというとニュース等でよく聞くのは、エボラ出血熱とか、ジカ熱とか、あるいはコンピューターウイルスもそうですが、何か得体が知れなくて怖いものというイメージが強いです。そんなウイルスの中には、生物の役に立っているものもいると聞き、驚きました。

 

 

 

中屋敷:ウイルスというと、どうしても人の病気を起こすものというイメージが強いですが、この地球上には色んなウイルスが存在しています。役に立っているという表現が良いのか分かりませんが、生物ゲノムに入り込んでいるウイルスの中には、その生物にとって大切な役割を果たしているものが結構、知られています。というより、実は私たちの大部分はウイルスで出来ていると言っても良いのです。ちょっと奇をてらい過ぎて、正確な表現ではないかも知れませんが。

 

 

 

―「私たちの大部分がウイルスから出来ている」というのは、衝撃的なお話ですが、それはどういう意味なのでしょうか?

 

 

 

中屋敷:ヒトのゲノムDNAの中にも、実はたくさんのウイルスが入り込んでいます。その中には正真正銘のウイルスも相当数いますし、ウイルスとの厳密な区別がよく分からない「ウイルスのようなもの」は、もっとたくさんいて、ゲノムの半分近くを占めているといった有様です。たぶん、どこかで聞いたことがある話だと思いますが。

 

 

 

―「ジャンクDNA」とか呼ばれている部分のことでしょうか?

 

 

 

中屋敷:そうです。以前は、そういったゲノム中の「ウイルスのようなもの」は、利己的な寄生者たちが勝手に増えて、その死骸というか、痕跡を巻き散らかしているだけの、ゲノムのゴミだと思われていました。でも、最近、実はその「ゴミ」が生物の機能や進化にとても大切な役割を果たしていることが次々と明らかになっています。

感覚的に言えば、私たちのゲノムというのは、単独の「自己」として進化しているだけではなく、ウイルスのような外部からの侵入者も取り入れ、あるいはゲノムの寄生者みたいなものも積極的に利用して、進化しているということです。ウイルス感染なんて、計画して起こる訳ではないですから、そんな偶然にやってきたDNA配列を利用して進化が起こり、今の私たちがある、という点が面白いなと思います。

 

 

 

―感染したウイルスの遺伝子を用いて進化が起こっているというのは面白いですね。

 

 

 

中屋敷:1999年にエリック・レイモンドという人が、コンピューターソフトウェアの開発様式を表現するのに「伽藍とバザール」という言葉を提唱しました。これは、伽藍、つまり整然と配置された寺院や教会の建物群のように、大企業に主導された形でソフトウエアが体系的に開発されていくウインドウズOSのような様式と、バザールにバラバラと人々が集まって来て市場が形成されるように、いろんな技術者がパーツとなるソフトウエアを持ち寄ってシステムを作り上げて行くリナックスOSのような様式を対比した概念です。

 

 

生物のシステムというのは、例えば「哺乳動物とはこうあるべきだ」みたいな形で整然と進化してきたというより、ウイルス感染とかトランスポゾンの転移とか、そんな偶然に持ち込まれた「モジュール」を利用して、思いもかけない「プラグイン」がゲノムというOSに付加されて進化が起こったような所があると思います。つまり「バザール」による進化です。例えば、人間の知性を司る脳も、そういった「プラグインモジュール」の影響で発達してきたと主張されている研究者もおられます。

 

 

 

ウイルスが、私たちを構成する「パーツ」になっているということですね。

 

 

 

中屋敷:そうです。そんなパーツがたくさんあるのです。現在、多くの生物の全ゲノムが解読されていますが、どんな生物のゲノムにも、たくさんのウイルス配列が見つかっていますし、「ウイルスのようなもの」まで合わせると、ゲノムの半分以上を占めているということも決して珍しくありません。ものすごい数です。

 

 

 

そういう意味では、「すべての現存生物はウイルスと一体化している」と表現できるのかも知れません。それくらいウイルスは生物界に普遍的に存在しています。「ウイルスは病原体」というのは、ウイルスを矮小化した見方だと思います。